都道府県・水道事業ビジョン
1.新水道ビジョン策定の背景
水道を取り巻く環境の変化に対応するため、厚生労働省ではこれまでの「水道ビジョン(平成16年策定、平成20年改訂)」を全面的に見直し、平成25年3月に「新水道ビジョン」を策定・公表しました。改訂の主な背景は①人口減少社会の到来、②東日本大震災の経験の2点であり、水道事業者にはこれらを踏まえた運営基盤の強化が求められています。「新水道ビジョン」では、これまで国民の生活や経済活動を支えてきた水道の恩恵を、今後も全ての国民が継続的に享受し続けることができるよう、50年後、100年後の将来を見据え、水道の理想像を示すとともに、取組の目指すべき方向性とその実現方策、関係者の役割分担などを提示しています。
2.水道事業ビジョンの概要
2-1.位置づけ
厚生労働省は、水道事業者及び水道用水供給事業者に対して、新水道ビジョンの考え方を踏まえた水道事業ビジョンの策定を要請しています(なお、都道府県の水道行政に対しては都道府県水道ビジョンの策定を要請しており、これら両方を指して地域水道ビジョンと整理されています。)。我が国の水道事業は、高度経済成長期における水道施設の急速な新設、拡張により水道普及率は一定の水準に到達しているため、現在は更新・改良等が中心の施設整備を行っています。そうした成熟期にある水道事業において、長期的視点を踏まえた戦略的な水道事業の計画立案が必要です。また給水区域の住民に対しては、事業の安定性や持続性を示していく責任があります。水道事業ビジョンは、このような観点を踏まえた水道事業のマスタープランとして位置づけられるものであり、策定後は住民に対して広く公表していくことが重要です。
2-2.作成主体
水道事業ビジョンの作成は、水道事業者及び水道用水供給事業者が自ら作成することが基本とされています。また、複数の水道事業を有する市町村においては、それらを包含して市町村単位で水道事業ビジョンを作成することが基本とされています。また、複数の市町村が事業統合する予定がある場合などにおいては、関係市町村が共同で水道事業ビジョンを作成することが望ましいとされています。
種別 | 作成主体 | |
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水道ビジョン | 国(厚生労働省) | |
地域水道ビジョン | 都道府県水道ビジョン | 都道府県の水道行政 |
水道事業ビジョン | 水道事業者、水道用水供給事業者 |
2-3.計画期間
当面の目標を策定から概ね10年後とし、50年、100年先の将来を見据えた水道事業の理想像を明示することを基本としています。
2-4.基本的な記載事項
「新水道ビジョン」で示す50年、100年先の水道の理想像を踏まえたうえで、「安全」「強靱」「持続」の観点からの課題抽出や推進方策を具体的に示すとともに、その取組の推進を図るための体制を示します。
- 水道事業の現状評価・課題
- 将来の事業環境
- 地域の水道の理想像と目標設定
- 推進する実現方策
- 検討の進め方とフォローアップ
3.水道事業ビジョン策定の手順
水道事業ビジョンは「水道事業体における事業経営の指針」であるため、水道事業を取り巻く社会全体の動きや多様なステークホルダーとの関係性に留意した上で策定する必要があります。地域の水事情に精通した学識経験者、水道利用者である住民等、第三者の意見を聴取・反映することが望まれます。そのための手法としては、ビジョン策定委員会の設置、住民アンケート、パブリックコメント等が考えられます。また、都道府県が策定する都道府県水道ビジョンとの整合についても考慮する必要があります。
日水コンでは、このように多様なステークホルダーとの関係性を考慮し、意識の共有を図るために、「新水道ビジョン推進のための地域懇談会(厚生労働省)」の事務局補佐や、都道府県の水道行政、水道事業体の地域水道ビジョンなど、本テーマに関連する数多くの業務に携わっております。水道事業体職員間のワークショップにより、日常業務の中で感じている課題等の意見を集約した事例もあり、地域の実情に合った「新水道事業ビジョン」の策定をお手伝いいたします。
項目 | 概要 |
---|---|
1)計画策定の背景・目的、位置づけの整理 | 水道事業ビジョン策定の背景や目的を整理します。また、市町村の総合計画等上位計画や、個別計画との関係性について整理します。 |
2)水道事業の現状評価・課題の抽出 | 事業特性や地域特性を考慮した上で、業務指標(PI)などを用いて現状を評価し課題を抽出します。地域水道ビジョンを策定済みの水道事業体においては、施策の進捗状況などについてレビューを行います。 |
3)将来の事業環境の分析 | 水需要や水源特性といった外部環境、また施設の更新需要や組織体制といった内部環境について将来見通しを整理し、想定される課題を抽出します。 |
4)水道の理想像・目標の設定 | 2)、3)を踏まえ、当該水道事業の実情に応じた水道の理想像を設定します。また、現状から理想像に至るまでの目標について、「新水道ビジョン」が提唱する「安全」「強靱」「持続」の観点から設定します。 |
5)推進する実現方策の設定 | 目標を達成するための実現方策について設定します。なお、安全の観点で「水安全計画」、強靭の観点で「耐震化計画」、持続の観点で「アセットマネジメント」は、戦略的アプローチとして必ず言及する必要があります。 |
(投資・財政計画の検討) | 総務省は公営企業に対して「経営戦略」の策定を要請しています。水道事業ビジョンを経営戦略としても位置づける場合は、必要な投資の考え方やそのための財源措置についても整理・検討します。 |
6)フォローアップ手法の検討 | 事業の進捗状況を管理し、また定期的に見直しを行うための指標の設定など、フォローアップ手法について検討します。 |
7)新水道事業ビジョンの取りまとめ | 一連の検討結果を「新水道事業ビジョン」として取りまとめます。また、お客様に水道事業を理解していただけるよう、興味を引くデザインや分かりやすい文章表現を用いて作成します。 |
4.業務実績
近5ヶ年の実績(平成30年10月1日現在)
受注年度 | 発注者 | 業務名称 |
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平成25~28年(2013~2016年) | 厚生労働省 | 〔国〕新水道ビジョン推進支援に伴う調査等業務 |
平成26年(2014年) | 栃木県 | 〔都道府県〕栃木県水道ビジョン策定業務委託 |
平成28年(2016年) | 北海道稚内市 | 〔水道事業体〕稚内市水道ビジョン策定業務委託 |
平成28年(2016年) | 埼玉県入間市 | 〔水道事業体〕入間市新水道ビジョン策定業務委託 |
平成27~28年(2015~2016年) | 奈良県大和郡山市 | 〔水道事業体〕大和郡山市水道事業ビジョン及び施設整備計画策定業務 |